活躍する同窓生 vol.1 伊藤美奈子さん

今回は川村学園女子大学1期生の伊藤美奈子さんです。

農業で楽しい毎日

伊藤 美奈子 文学部史学科 1期

横浜で生まれて熊谷に越してきて川村学園を卒業しサラリーマンになって、農業とは全く無縁の人生を送っていました。

ある時、後の師匠となる近所の農家と交通事故を起こしてしまい申し訳ない思いから農作業を手伝う事にしたのが農業を始めるきっかけになりました。師匠は農作業の間、面白おかしく色々な話をしてくれていましたが次第に農業に誘うようになりました。上手い例え話を用いて「食糧難が来る」「皆がやらない事をすれば成功する」「始めるなら今だ」「農業はいいぞ~」「農業は楽しいぞ~」呪文のように繰返し言い続けるのです。当時の私は仕事の疲れ、人間関係に疲れ、生活に疲れて真っ暗の状態だった事もあり、大した資格も大したキャリアも無くこのままサラリーマンを続けても、神経をすり減らして苦しいだけだ。自然が相手の農業やってみようかなと段々とその気になってしまったのです。もう人の顔色を窺って生きるのは止めよう!これからは自然と共に、太陽と共に人間らしく生きようと農業をする事にしました。

いざ始めると苦労の連続でした。見様見真似で取掛かった作業は全て失敗に終わります。プロの農家が簡単に行う作業が何と難しい事か。農業を知っている世代の方々ならわかると思いますが全ての作業にノウハウがあり、風向きや手順、力加減等ほんの少しの条件で成功もするし失敗もするのです。完全になめていました。農業から一番最初に学んだのは自分は何も知らない何もできないという事でした。生活も大変でした。当時はシングルマザーで収入を維持しなければなりませんが作物が収穫でき、お金になるまでには何か月も掛ります。その間、肥料や農薬、燃料費の支払いと農業は思った以上にお金が掛りました。昼は農作業、夜はバイト。作業を調整し日払いの派遣など必死で働きました。「24時間、365日働いても疲れない壊れない体が欲しい」なんて思ったりもしました。

そんなに働いても大変でも農業を辞めようと考えたことは一度もありませんでした。何故か楽しいのです。そして気持ちがいいのです。それは当時も今も同じです。暑くて寒くて、晴れて欲しい時に晴れなくて、雨が降って欲しい時に降らなくてと思うようにいかない時は「自然が与えた試練なんだ!負けるものか!自然との闘いだ!」(笑 勝てるはず無いのに)。おそらく自然とではなく自分と闘っているのだと思います。そして作業が終わったり、収穫を迎えると必ず達成感が来て充実感に包まれる。これが楽しいのです。農業はそういう仕事だと私は思います。農業では自然を体で感ずる事ができます。雨や季節のニオイ、陽の暖かさ、風の爽やかさ。気持ちが良い感覚を得られます。農業はそういう仕事だと私は思います。良さは語りつくせませんが人間に様々な良い事を感じさせてくれるのが農業だと私は思うのです。

努力が認められて、新規就農の経験者としてサポーターに選任されたり、新聞、ラジオに出る機会を頂戴しました。当農園の主力作物で、自給率0.01%以下のゴマに関してはBS NHKワールド『おいしい東京』に生産者として出演させていただいた事もありました。また、昨年には当初からの目標であった法人化も果すことができました。

農業を始めてから12年、喜びあり、苦労あり本当に様々な事がありましたが、毎日楽しくて楽しくて仕方がありません。若い頃は何の為に生きるのか悩んでいて、その後はどの様に生きたらいいのかを悩んでいましたが、今はどのように過ごすかを考えて生きています。明日は何をしようかと毎日楽しんでいます。農業のおかげで気持ちの良い生き方ができていると思います。

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